先日、インターンシップの学生応対をする機会に恵まれました。初めての経験で、それも当日の朝に支持されたので何も準備できず、そしてどんな目的でインターンシップに来ているのか、企業側としてはどういう応対を求められているのか皆目掴めずいざ本番を迎えてしまいました。
巷で流れ聞くインターンシップのイメージとしては実際に企画をやってもらったり、一ユーザーとしての意見を出してもらったりと実務的なことをやっている印象があります。残念ながらそのようなノウハウがあるわけでもなく、渡された1週間のプログラムは各部署で業務内容の説明に終始するようなものでした。
それってどうなの?会社説明会じゃないんだからさ、という思いはありました。自ら江戸時代よろしく「頼もぅ!」と門戸を叩いてきたわけではなく、大学卒業になくてはならない単位がついてくるものであることはわかっています。だからといって、つつがなく半日を乗り越えればそれでよしではお互いにハッピーな時間の使い方とは言えません。
会社の対応方針はさっぱりわからずですが、そうとなれば好きにやらせてもらおうじゃないかということで、初めてのインターンシップ指導を半日経験しました。
やりたいことがわからない大学生
我ながら意味がない質問だなと思いながらも、「漠然とどんな職業に就きたいとかってあるの?」と聞いてみると、「何がやりたいのか自分でもわからないんです」との回答でした。それもそうでしょう。技術系の大学でエンジニアを目指しているわけでもなく、教員養成系で教育実習でもありません。法学部の学生さんでしたが出来たてホヤホヤ、初代法学部生の2年生ですので司法試験を目指しているわけでもありません。
決して卑下するわけではありませんが、地方私立文系学部ですので「わたしは大学でこれを学ぶんだっ!」という意気込みよりも、世代の流れとして四大に入ったといった側面が大きいでしょう。何を隠そう私も同じ大学の同窓で、正直この大学でなきゃっ!といった理由は何一つなく、適当に見繕って二校受験した私大のうちの受かった大学というだけで入学したのですから、2年生にして具体的な目的を示せと言われても「特にない」というのは当時の自分を思い返せば十分に理解できる心境です。
勧められたから来てみた金融機関
金融機関、ぶっちゃけ銀行(私の場合は信用金庫ですが)は割と「銀行で働きたい」と言っている学生さんが多いような(勝手な)印象があります。営業店勤務時代に支店訪問で何人かの就職活動生とお話をしたことがありますが、「銀行に興味があります」と言われて何で?と問い返せば「社会にとって必要だからです」といったどこかで聞いたことがあるような返答が帰ってきます。就職活動生はより切実ですから「仕事は大変ですか?」や「やりがいはなんですか?」といったことも聞かれたこともあります(どう私が返答したのかは、まぁやめておきましょう)。
そのような学生さんに何人か接してきた私としては、まだ2年生で就職活動も少し先。ましてや企業の採用活動も遅くなって時間的に余裕もある彼女は、「何をやりたいのかわからない」という悩みに「じゃ、金融機関に行ってみたら?」の一言でインターンシップが決定したそうです。
私個人としては、最前線の営業店の様子を経験してほしいなと思いながら、本部の各部署を回ってきた感想を聞いてみました。答えはこうです。
もっと迫力があるかと思ってた。
私もそうでしたが、何も知らない人にとっては支店の窓口がイコール銀行です。バックオフィスの本部の様子だけを見れば、確かにそのように思われても仕方がありません。これには正直申し訳ないなという思いがしました。金融機関にインターンシップに来ているのに現金を目にすることもなければ、融資の書類を目にすることもないのですから。融資の書類なんて、法律の塊なのに。
でも、そこはさすが法学部生
銀行業でとても重要な法律用語に、期限の利益というものがあります。入社数年経ったものに「期限の利益はなんだ?」と言ってもまともな答えどころか「なんですか、それ?」と言い出す人もいてびっくりなのですが、そこはさすが法学部生、ちゃんとわかっていました。私は経済学部卒業なので一応必須の民法の講義は受けたもののチンプンカンプン。期限の利益なんて会社に入ってから知りました。
法学部生なので民法も「債権」や「物件」と細かく分かれて講義があるようで、私が学生の時に知らなかった根抵当権とか差し押さえといったことも理解していました。
一方で簿記、財務諸表系はさっぱりです。もちろん、金融の「き」の字もわからないといった印象でした。
焦るな、大学2年生
極端な話、エンジニアや士族を目指していない限り、ちょっとやそっとのことで将来の向いていることなんてわかるわけありません。なにせ、アルバイトこそしているとはいえ、がっつり自分の時間をとられる労働者になったことはないんですから。不安をおぼえることに、幸せを感じた方がいいと思います。
サラリーマン年長者が伝えたこと
卒業論文は指導教官がどういう指導をするかはわかりませんが、真面目に取り組んでほしいです。他人を理路整然と説得させる文章の書き方を教わる最初で最期の機会ですので、これを逃すと会社に入った後が大変です。現に後輩の稟議書を読みながら「おまえ、卒論ちゃんと書いたのか?」と聞くと、ありませんでしたという者が書いた稟議書ほど難読な文章はありません。また、説明を求めても求められたポイントが掴めないのか、核心部分を聞き出すのに苦労します(もっとも、これは私の聞き方がヘタクソだという問題もあります)。
文章の書き方は練習というよりも、一定期間集中的に訓練を受けることでうまく書けるようになるものだと考えています。その「ある一定期間」が卒業論文だと思います。
そしてもう1つ。ゼミが始まるまでは講義で仲良くなった人ができるぐらいかもしれませんが、ゼミになれば2年間付かず離れずです。そこでの協力関係や一緒にやりきった感は、後々まで続かせることができるはずです。そこで、ゼミで一緒になった人たちとは一生懸命に関わってほしいと思います。学部によっては男女のパワーバランスで男が勝ってしまうこともあるかもしれませんが、それにひるんでしまってはもったいないです。
ゼミと卒業論文は大学生のコミットすべきミッションです。学ぼうと思えば交渉ごとも学べますし、プレゼンも学べます。試しになんでもやってみて、結果何も残らなくても時間を消費したことに対する責任は大学には問われません。これが働き出せば途端に時間に対して責任が生まれます。どういったことにどれだけの手間と労力がかかるのかを知るよい機会として、一生懸命にゼミの同級生と学んで遊んでほしいと思います。
ビジネスの面で今まで人海戦術に頼っていたものはほとんどコンピュータがやってくれるようになりました。これからもどんどん単純作業は減っていくでしょう。仕事とは今ある何かに新しいアイデアを加えてそれに価値があるかが問われる場面ですが、今まではそれを見えるものにするための人手が必要でした。しかし、これからはそれらもちょっとした入力でできるようになってしまいます。最後に残される仕事は、やはり今あるものに新しいアイデアを加えて新しい価値を生み出すことに尽きると思います。
大学生は、それを学び身につけ、訓練をする時間をもっているわけですから。
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