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テンプレートと過去文書の使い回しの勘違いーテンプレート化は書類ではなくて思考をテンプレート化することではないだろうか

テンプレートと過去文書の使い回しの勘違いーテンプレート化は書類ではなくて思考をテンプレート化することではないだろうか

貸出稟議書には必ず書かなくてはならないことがあります。それを全て満たしているのか考えながら稟議書を作成するのは、不安の種を頭の上に乗せながら仕事をしていることで本題への集中力を削ぐ可能性があります。

ならばテンプレート化して必ず記載しなくてはならない事項をあらかじめ決めておけば、そのような不安は起らないはずです。

そのような考えから、テンプレート化を作成することを視野に入れながら稟議書を作成することにしました。それには過去に作成した稟議書を模すのが最適だろうとの(甘い)考えから、以前の稟議書を引っ張ってきて必要箇所の数字を直すということをやってみました。

具体的な資金使途ー収益物件購入資金

銀行業の融資業務においてテンプレート化された最たるものがマイホームローンの稟議書です。特に給与所得のみの方を対象としたマイホームローンは記載漏らしてはいけないものとそれ以上必要のないものがはっきりしているので、チェックシートとしてテンプレート化されています。つまりそれが全てになればよいのです。

給与所得者の返済は文字通り給与に依存しますので、後は給与を支給する会社次第です。その会社の決算書まで気にしていたら、とても日本人の夢ーマイホームを買うことなんて銀行が許してくれません。なので勤めている会社の決算についてはある程度検討から外します(まったく問題にしないわけではないので誤解のなきよう)。会社で長い間勤めていて返済に絶えうるであろう所得を(今まで)得ていれば、銀行は夢のマイホームを購入する資金を貸してくれます。

ところがこれが事業性となるとそういうわけにはいきません。その事業は今までどれだけの収益を生んできたのか。これから買おうとしている収益物件(例えばアパート)は返済に絶えうるだけの収益を生み出し、なおかつ今後もそうあり続けるであろうか。この、「今後もそうあり続けるであろうか」がどんな融資にとっても一番の問題点で、多少収入が減っても返済ができるのか。今までやってきた事業の収益を食っていかないかなど、将来的なことを考慮する必要があります。

収益物件購入資金の案件は、ある程度検討材料が決まっています。それは、今これだけの入居者がいてこれだけの家賃を払っている。今後若干空室ができたり、古くなって家賃が少し減ったとしても、まあある程度は予測がつくよね?が前提にされているのです。

今回はたまたま少し前に取組んだものと同じような案件が持ち込みされたことから、テンプレート材料として前回の稟議書の数字を入れ替える作業をあえてやってみました。 

決定的に欠如していたこと、それは案件を練るという思考作業

必要な書類を机の上に準備して、早速作業にかかりました。資料から数字をとって過去の稟議書に置き換えていく作業です。これがやってみるとどうにもこうにもつまらないのです。資料から数字を拾って電卓を叩いてWordに入れていく。ごく普通な稟議書の作成風景ですが面白くない、というよりも案件の全体像がまったくみえてこないことがつまらなさの元凶だと思いました。

にたような案件は山ほどありますが、1つとして同じ案件はありません。

僕は案件にとりかかる際には、手元にある資料から読み取ることができる情報を可能な限り絞り出し、レポート用紙に書き出す作業をしています。書き出す順番は問わず、とにかく手当り次第に書き出していくのです。その過程を経ている間に数字と数字の関連性に気がついたりしますのでそれもノートに書き出します。それは理路整然とした案件ノートというよりも、ときに感情も入ったものになります。しかし、ここで気をつけていることは以下の3点です。

  1. 今ある資料からわかること
  2. 今ある資料ではわからないこと
  3. その上でどのように判断するか

 この3点です。

営業担当からすれば、多少難しい案件であってもとにかく実績のためにやりたいという気持ちが走りますので、稟議書もその案件を実行するためのことしか書かれにくくなります。そうではなくて、案件に対して自分の実績とかはとりあえずおいておいて、ニュートラルに案件に向き合うために、上記の3つをしっかりと区別するようにしています。

遠回りにも感じるノートへの書き出しですが、この思考作業を経ることで案件の全体像がうっすらとみえてきます。お金を貸してほしい、または借りてほしいということに対して、今わかっていること、わからないことをふまえてどのようにそれを判断するのか。それは前向きな方向で追加資料を依頼することなのか、それとも案件をリジェクトすることなのかを判断することが、3つ目のその上でどのように判断するかになります。

この作業をテンプレート化しないといけない

結論からすると、テンプレート化すべきことはこの思考作業でした。この作業を欠落させて稟議書の体裁をテンプレート化することと混同していたのです。稟議書は思考作業を行った結果を化体したものであって、化体する作業自体に優先されることはまずは案件を考えて全体像を掴むこと。そして判断すること。これに慣れていない人のためにテンプレート化する必要があり、またなれている人にはケアレスミスで思考作業の一部欠落が起らないための補完的な側面でテンプレートが必要です。

思考作業をテンプレート化する。かなり高所からのものの言い方になりますが、これを少しずつ進めていきたいと感じました。

追記

上記3つのポイントはこちらの本に書かれていたものから利用しています。

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