OA化が進んでいますので、コンピュータで1つの数字を入れれば複数の処理をしてくれます。例えば、私は金融機関の人間なのでその中で例をあげると、お客さんの口座に10,000円を入金すれば、全体の預金の残高が10,000円増えますし、同時に現金も10,000円が増えることになります。
もう少し複雑なものを例に挙げると、融資金を1,000,000円お客さんから返済してもらうとなると、お客さんの指定口座から1,000,000円が出金されて金融機関の貸付金の金額が1,000,000円減少し、同時にお客さんの指定口座から貸付日から当日までの利息が自動的に計算されて出金され、金融機関の受取利息に自動的に計上されます。
1つのコンピュータの入力、ここではオペレーションとしましょう、それをやってやると、複数の取引が自動的に完結する。極めて便利で効率的な仕組みです。
この仕組み、いわゆる複式簿記に則っています
私は簿記検定を持っていませんし、大学の講義などで簿記の学習をしたことがないのでこの説明が正しいかはいささか怪しいところですが、複式簿記は必ず1つの勘定科目を動かせば、それと対になる勘定科目も動かして取引成立となるわけです。簿記の本などを読むとよく感情仕訳というものが図示されていますが、縦横十字に引いた線(業界によってはトンボともいう)の左右にそれぞれの勘定科目が書かれ、左右は必ず一致します。なので貸借対照表は必ず左右同じ金額になりますし、損益計算書も仕訳のように書けば黒字でも赤字でも左右が一致します(損益計算書であまりこの形式は見たことがない)。
1つのオペレーションで複数の取引が行われるのはこのためです。しかし、時には諸事情により1つのオペレーションで複数の取引が行えない場合があります。そういうときは、当然その相手方となる取引を行ってやらないと、当日の勘定が一致しません。
よく言われる、銀行は1円でも合わなかったら会うまで帰ることができないというアレですね。
探せば多くの場合原因は出てくるのですが、年に1度もないぐらいの低頻度であるもののどうにも原因が探せなくて、そういうとき専用の異例処理をやって翌日へ持ち越すことになります。
さて、翌日はどのように解決へ持っていくか
どこの取引で勘定の一致までたどり着いていないのかをまず見つけなくてはなりません。それはその日の伝票を全て並べてみなくてはわかりません。しかし、だいたいあれが怪しいな?という勘所もあります。
往往にして、ミスはそういったところに潜んでいます。
そういう場合でも、伝票1枚1枚の面を見てみると、金額を間違えることなく正しくオペレーションはされていることがあります。そうすると、そもそもそのオペレーションを選択したことが間違っているのかもしれません。
ここで、勢いその可能性を察知してオペレーションコードブックを読むのも1つの手です。しかし、こういうときこそオペレーションの基本、どのような勘定の動かし方をしたくてそのオペレーションを選んだのかということを顧みることが大切です。
情報カードと鉛筆
ここで必要なものはコードブックより前に、まっさらな白紙の紙と鉛筆です。ここでは、なんども書いたり消したりするので、情報カードのように小さい紙がいいでしょう。順番を並べ替えられますし、何より間違った仕訳を書いてしまったら、消さずに捨てれば済みます。
その事務処理で必要であった勘定の仕訳を、紙の上でまず復元してみるのです。
同時に、必ずトンボの左右に勘定科目が書かれるわけですが、ここで左右逆に勘定が起票されていないかなど、基本的な考え方の相違や誤解を発見できます。複雑な取引になればなるほど、この仕訳がきちんと理解できているかが重要になります。
ここで誤解や間違いがあっては、そもそもコードブックから正しいオペレーションコードを選択することができないからです。
なんどもトンボを書き直し、他の人とも確認しながら仕訳が正しく行われているかをチェックしていきます。
オンライン化で楽にはなったけれど、覚わらなくなった
銀行の業務もオンラインの進化で以前のことを思えばとても楽になりました。1つのオペレーションで複数の勘定操作が可能となったわけですから、昔はトンボの左右を1つずつ、少し前はトンボを1つずつ、今では複数のトンボを1回のオペレーションですますことができます。
それだけに、そのオペレーションの裏側でどんな勘定の移動があったのかを頭で考えることがなくなりました。
そうすると、問題はどのオペレーションコードを選択するかが重要になってきますが、その基本はやはり正しく勘定の仕訳が理解できているかに尽きると思います。
勘定があっていない→オペレーションの選択が誤っている→勘定処理に誤解がある→書き出してみると勘定移動がうまく流れない→まずはトンボをしっかりと成立させるという流れで正しいオペレーションを組み合わせていきます。そのためにはやはり勘定仕訳のことについて十分に理解していることが大切です。
そして、これらをノートにまとめるとこうなります。
オペレーションコードを覚えることも大切ですが、そのオペレーションで何が行われているのか。それはやはり紙と鉛筆で書き出してみるのが一番です。
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