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読み手としての城山三郎 ーワープロで書いたか、手で書いたかー

読み手としての城山三郎 ーワープロで書いたか、手で書いたかー

先日、経済小説というジャンルを築いたとされる小説家、故城山三郎さんのご長男さんのお話を聞く機会に恵まれました。名古屋ご出身の城山三郎さんは2007年に亡くなられて間もなく8年になりますが、今でもその存在感は大きく、会場はそれはもう足の踏み場もない状態そのもので、建物2階の階段の廊下からかろうじて演台が見えるところでお話を聞くことになりました。

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お嬢さんの井上紀子さんは城山三郎さんに関する本も出版されていることもあり、城山三郎の娘さんとして世間にも知られていますが、ご長男さんは父城山三郎について人前で話すことは今回が初めてのこと。親戚も来ていて緊張しているとおっしゃっていました(城山三郎さんの奥さんも名古屋ご出身)。

講演では約45分、父親と息子、城山三郎とその息子としてのお話がありました。テーマが経済や企業といったものに焦点をあてたものが多かったため圧力がかけられていたことがあったこと、また晩年は個人情報保護法の制定に猛烈に反対されたことなど、身近にいる方だからこそ感じとることができたであろう城山三郎さんの生き様を知ることができたと思います。その中でも、読み手としてのエピソードがとても興味深かったのでご紹介いたします。

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ワープロで書いたか、ペンで書いたか

有名な作家であることから献本も多数あったとのこと。ご長男さんも出版社から送られてくる本をよく読んでいたそうですが、城山三郎さんはよく「これはワープロで書かれたものだ」、「これはペンで書かれたものだ」とおっしゃっていたそうです。

拙いながらも私もこうして文章を書いて、あわよくば誰かに読んでもらえて伝えたいことが伝えられればと考えていますし、本業においても文章はもちろん書きます。書き手として良い悪いは別として、今こうしてパソコンで文章を書いているのと、手書きで文章を書いているのとでは、私の場合文章の出来上がりに変化があります。特に顕著にそれを感じるのはパソコンで下書きをして手書きで清書をする時です。

書きたい内容、ないしは書くべき内容はパソコンであっても手書きであっても変わりはありません。しかし、パソコンで文章を作り上げて手書きで清書するときに感じる、文章の締め方や句読点の打ち方、接続詞の使い方などパソコンで書いて読み直してこれでよして思った文章でも、手書きをするとどうにも感触が合わないことがよく起こります。

一方で自分が読み手であったときに、この文章は手書きで書かれたものなんだな、ワープロで書かれたものなんだなと感じたことはおそらくありません。それよりも、気にもしていなかったのかもしれません。自分で書きながら手書きとパソコン書きで感触に違いがあることをわかっていて、それが読み手にどのように伝わっているのかを考えたこともありませんでした。

読み手にどのように書いたことが伝わるのか、または伝わらないのか。それはわからないものだと考えていましたが、わかる方にはわかるものだと思ったと同時に、やはり文章を書くことを生業としていた方の文章の読み方はそこまで計算して文章を書かれているのかと驚かされたエピソードでした。

書いてあることは全然わからなかったが、100万部売れるんじゃないか

長男さんが予備校で隣の席で友人であった方がその後一橋大学(城山三郎も一橋大学卒)に入学され、在学中にデビュー作となる小説をぜひ城山三郎さんに読んでほしいと渡されたことがあったそうです。小説の路線も世代も全く違うこともあってか、感想は「全然わからなかった」という、この作品でデビューをと考えている友人には辛辣にも聞こえそうな感想ではあったものの、「だけど100万部は売れるんじゃないか」と直感で感じ取りそのように伝えられたそうです。そして、実際その本はミリオンセラーとなったそうです(実際、どの作家のどの本かは控えておきましょう)。

作家の方々が全てそのようなものがわかるとは思いませんが、経済や企業をテーマにした著作が多かった城山三郎さんらしく、内容がわからないながらも売れるだろうとつかめること、ひいてはその小説がその当時の時代にマッチしているものだと感じ取られたあたりは、やはり文章を書くことを生業としている人の文章の読み方はこうも違うものなのかと思い知らされたエピソードでした。

 

これら以外にも日本がバブル華やかしさをどのように見ていたのか、実業を大切にすることなど多くのお話があり、経済小説が好きな私にとってはどのお話もとても印象的な講演でした。

 

ご参考

今回の講演が開催された、名古屋市にある旧川上貞奴(日本初の女優として知られている)邸には、城山三郎はじめ名古屋にゆかりのある作家の資料やパネル展示が行われています。

文化のみち二葉館 旧川上貞奴邸
〒461-0014 名古屋市東区橦木町3丁目23番地
電話:052-936-3836 ファックス:052-936-3836
http://www.futabakan.jp/index.html

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