豊田佐吉が自動織機を発明し、その会社が後の世界のトヨタを産んだことはみなさんご存知のとおりです。
ところが、実際に車の開発に手をかけたのはトヨタの誰だったのか。こちらは意外と知られていないかもしれません。
その名は豊田佐吉の長男、豊田喜一郎。自動車開発に心血を注ぎ、第二次大戦中も軍需産業に指定されながらも乗用車開発に力を込めていました。
戦後のインフレと資金繰りの悪化に伴う労使交渉の責任をとって社長の座を番頭石田泰三へ譲ります。この時、トヨタはまだ本格国産乗用車の開発、発売にたどり着いていませんでした。ところが社長退任の直後に朝鮮戦争が勃発。瞬く間に息を吹き返したトヨタでありましたが、喜一郎の社長復帰は昭和27年に享年58歳の若さで亡くなりかないませんでした。
そして昭和30年、トヨペットクラウンがついに本格国産量産車として世に送り出されたのです。自動車で日本に貢献しようとした喜一郎の志は生前かないませんでしたが、その意気込みがあってこその、現在の世界のトヨタであるのです。
機織り機から自動織機、そして自動車まで
トヨタ産業技術記念館はその名のとおり、日本の産業技術の進歩を垣間見ることができます。
人力機織り機
機織り機は両手両足を使います。そして横糸を通すシャトルは左右を行ったり来たりしますので、手を持ち替えなくてはなりません。佐吉はまずシャトルが自動的に左右を行き来する仕組みを思いつきます。そうすることで、織り手は筬だけを手で動かせば良くなりますので手を持ち帰る必要がなくなります。
横糸を通すシャトルが筬を手前に引くたびに左右を行き来しているのがおわかり頂けると思います。
蒸気機関へ
蒸気機関の発達で機械も大型化していきます。蒸気機関の発達は産業革命の要として捉えられていますが、まさにその通りだと思います。
動画ではわかりませんが、横糸がなくなるとシャトルが自動的に新しいものに切り替わるようになっています。
大型化、自動化が進めば当然トラブルがつきものです。トラブルは不良品を生み出します。そこで、糸が切れると自動的に機械が停止するという仕組みも開発されています。テレビなどでラインに異常が発生すると赤いランプが点灯してライン全体が停止するというシーンを見られたことがあるかと思いますが、その源流は既にこのときにできていたのだと感心させられます。
いざ、自動車開発へ
当時は織機会社の自動車部として、自動車開発の産声をあげました。そこでは既に自動車開発が完成していた海外の機械を購入するのではなく、強度試験器など工場で使用する機械までをも開発していたのです。
記念館では当時の工場の風景を人形を使って再現しています。
まずは商用利用から
自動車で日本を豊かにすることが喜一郎の夢であったわけですが、当時の日本は一般人が乗用車を購入できるような経済力があるわけでもなく、また一般人に乗用車への需要は皆無に等しい時代でした。そこで、まずは商用利用に照準を合わせます。トラックから、トヨタは自動車産業に参入したのです。
昭和30年、ついにトヨペットクラウン誕生
既述のとおり、戦後の混乱期はトヨタにも襲いかかり喜一郎は夢半ばにしてトヨタを後にします。戦後の混乱は日本に限った話ではなく、東西冷戦が世界中を席巻していきました。
幸か不幸か、日本は朝鮮戦争により景気が回復します。しかしその時は既に喜一郎がトヨタを去ることを決定したすぐ後のことでした。歴史の皮肉とはこのことを言うのでしょう。朝鮮特需により経営が急回復したトヨタは再び喜一郎を招き入れようと準備するものの持病の高血圧がたたり、国産乗用車の日の目を見ることなく喜一郎はこの世を去りました。
その3年後の昭和30年、トヨペットクラウンが発表されたのです。
モノが動く博物館
ボクが考えるこの記念館の最大の特徴は、歴代の機械を実際に動かしているところを見ることができることです。
また、部品製造の実演もあり、お土産にいただくことができます。
これは鋳鍛造の実演で作られた、カムシャフトコネクティングロッドの一部のミニチュアです。メカ付きの男の子であれば大喜びですね。
新幹線を降りたらすぐの場所
名古屋駅周辺は以前は工業地帯であったようで、トヨタの工場にのみならず洋食器で有名なノリタケカンパニーの工場があるなど現在でもその面影は残っています。赤煉瓦の工場は全てが当時のものではないものの、名古屋工業の軌跡を垣間見ることができます。
名古屋駅からは名古屋の観光地を巡回するメーグルというバスが走っていてそれでいくこともできますし、タクシーに乗ればあっという間に昭和初期の工場の様子を楽しめます。
名古屋駅から近いので旅行、または出張の帰りの新幹線に乗る前に、ぜひ足を運んでいただきたい観光地の1つです。
追記:
Nov. 20, 2014お土産の写真はカムシャフトではなく、コネクティングロッドのミニチュアでした。訂正いたします。
トヨタ産業技術記念館
〒451-0051 名古屋市西区則武新町4-1-35
℡052-551-6115
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